つるこぽん

2016年02月号 vol.26

卒業サムライからのメッセージ~池戸煕邦~

2016年02月29日 22:02 by iketo_hirokuni

『卒業文集』


卒業されるみなさんにツルハシへの想い、なんでもいいので書いて残してほしいなと思っています。

 なんて超漠然とした依頼文を受けてこの文章は書かれます。ほかの卒業生たちは何を書くんだろうか楽しみ。ツルハシ自体が良くも悪くも漠然としたつかみどころのない場だから、そこに関わるサムライたちの動機も関わり方もまちまち。「書き残したいツルハシへの想い」もきっと多様なんだろうな。

 私は将来、カフェ(的な居場所)をつくりたいんですよ。私は「書き残したいツルハシへの想い」として将来の夢をちょっと語ります。つくりたいカフェは倉庫みたいに広々とした空間で(出来れば吹き抜け付きの2階建てで)、空間の中央らへんにレジ&キッチンがあって、メニューは一緒にやる仲間のセンスにお任せする。カウンター席からテーブル席、一人でもグループでも対応できるだけのテーブルのバリエーションを用意。空間の雰囲気的には落ち着いて何かに向き合いたい人のための場も片方ではつくりつつ、遮るものがなくオープンな感じの場もつくりたい。それは入り口付近の方がいいのかな。壁にはちょっとおしゃれな雑誌や100人に1人がドはまりするような本を適当に並べたりなんかして。カラバコみたいな自由な表現の場があってもいいかもしれない。こだわりたいのは窓。大きな大きな窓を配して開放感に満ちた空気感にしたい。ちょうどイロハニ堂の窓がイメージにぴったり。つくりたいカフェはそんな感じ。そして2階の吹き抜け近く、1階フロアがよーく見渡せる特等席が私の指定席。いつもそこにいて何かをしている。

 私はマクドナルドとかガスト、サンマルクカフェのような不特定多数の人々が互いに深入りすることなく思い思いの世界を過ごしている空間が好きだ。そういう空間をすごく人間的だと感じる。なかなか私の思い描く空気感を言い表すにピッタリの言葉を私は知らないが、暫定的に一番近いのは「雑踏感」という言葉。カフェでつくりたいのは至極の雑踏感、洗練された混じり気のない雑踏感なのです。さっきは人間的と言ったけど社会的とも言ってもいいかもしれない。人間も社会も相同だしね。

 そんな至極の雑踏感に乗せてお客さんに提供したいのは偶然性。「人間を何よりも成長させるものは人との出会いだ」なんて言葉を聞いたことがあるし、そのことは私の実感とも外れていない。成長と言ってしまうとちょっと意味が限定されるから、「人間に何よりも影響を与えるものは人との出会いだ」としておこう。大事なのは人との出会いは偶然の産物だということ。だとすると溢れんばかりの偶然に満ちている場はなんとも気持ちのいい場ではないか。

 ただ、偶然性の保全というものはすごくすごく難しいことだ。「ここには偶然が溢れています!」なんて謳っている場所に偶然性はない。固定された人間関係がたまに訪れる新風に対して「いらっしゃい」とか言って笑顔で出迎える。それに何となく気持ちを悪くした新風は二度とそこに吹かない。だからひと工夫が必要なんだろう。元来、ツルハシブックスが大事にする言葉、「多様性が偶然性を育み、偶然性が可能性を拓く」。ツルハシは偶然性の保全のために本屋を借りた。本屋だからこそ偶然性に期待していなかった人が、偶然性にで出会うことができた。私はそれを雑踏感を供するカフェでやりたいのです。

 本屋だからできることもあるし、一方でカフェだからできることもあるだろう。ただ常にツルハシも直面している、偶然性を守り促すことの難しさはカフェの場でも同様だろうから、ツルハシでの試行錯誤はもれなく私の将来の礎になっている感がある。何年後かに、どちらがより偶然性に溢れているかを競い合おう。


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